

曼荼羅(まんだら)の世界
お大師さまは著書『御請来目録』の中で、こう記しています。
「密教は深玄にして翰墨に載せ難し。さらに図画を仮りて悟らざるに開示す」
(※密教の教えはあまりに深遠で、文字では伝え難い。ゆえに図画を用いて、理解に至らぬ者の目を開くのだ。)
密教の教えは、その深さゆえに、言葉だけでは伝えきれませんでした。そこで重視されたのが、仏像や曼荼羅など、視覚表現の活用です。壮大な宇宙観を説く密教においては、言葉以上に、目に見えるかたちで示すことが、人々の理解を導いたのです。曼荼羅には細やかな規則が定められ、ひとつひとつの図像が重層的な意味を宿しています。
曼荼羅とは、サンスクリット語の音写で、「集まったもの」「満ち足りた状態」「聖なる空間」といった意味があります。仏教美術においては、数多くの仏が秩序正しく並ぶ絵図を指し、複雑な教義を視覚化した「見るお経」とも言われます。真言密教を日本に伝えたお大師さまも、絵による理解の大切さを強調しました。
曼荼羅には様々な種類がありますが、もっとも代表的なのが、胎蔵界曼荼羅(たいぞうかいまんだら)と金剛界曼荼羅(こんごうかいまんだら)の二つを対にした「両界曼荼羅」です。胎蔵界曼荼羅は『大日経』、金剛界曼荼羅は『金剛頂経』という経典の内容を絵にしたものです。
もとは別々の曼荼羅でしたが、お大師さまはこれを一対のものとして発展させ、両界は共に大日如来を中心とした密教宇宙の姿を表していると説きました。
両界曼荼羅は寺院の堂内に掲げられ、その前で重要な法要や儀式が営まれます。
金剛界曼荼羅(こんごうかいまんだら)
「金剛」とはダイヤモンドを意味し、大日如来の知恵が、砕けることのない強さを持つことを表します。曼荼羅は9つのグループに分かれ、右上の「理趣会」を除き、すべての中心に大日如来がいます。
大日如来の智慧は内から外へ、外から内へと、まるで回路のように絶えず流れ巡り、仏たちを結んでいます。四角と円の幾何学的な構成が特徴的です。


胎蔵界曼荼羅(たいぞうかいまんだら)
こちらは大日如来を中心に12のグループで構成されます。すべての仏は大日如来から生まれ、また衆生の心に宿る「悟りの種」を守り育てる存在です。
金剛界の知恵が厳格で力強く縦横無尽に働くのに対し、胎蔵界では、太陽の光のようにやさしく、力強く、世界のすみずみまでを包み照らしています。


両界曼荼羅が伝えるもの
二つの曼荼羅は、大日如来の二つの側面を表します。金剛界は「理」の側面、胎蔵界は「情」の側面。二つが一体となって、私たちを導き、宇宙の真理へと誘うのです。
両界曼荼羅の前に立つとき、私たちもまた、その壮大な宇宙の中に身を置き、内なる仏の光に触れることができるでしょう。



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